5日目②

河川敷に着いたがまだユウトは来ていない

いつもの場所に車を止めて買ってきた温かいミルク ティーで冷えていた手を包みこむ
ユウトに買ったコーヒーも一緒に包み込む

『もう来るかな…?』
一日会ってないだけで随分会ってなく感じていた

"コンコン"
車の窓を叩く音

ユウトが来たんだと急いで窓を見る
『…??……えっ?…あっ!!』
そこに立っていたのは小川だった

少し窓を開け
『小川様どうされたんですか?こんなところ で!?』

【ここを通ったら、偶然井上さんの車が見えて、も しかして乗ってるのかなって思ったんだよ
良かったら少し話ししない?
車に乗っていい?】

『…あっ…あの…えっと待ち合わせしてるんでちょっ と今日は…すみません』
ユウトの存在は知られたくない

【じゃあ、その人が来るまででいいからさ。
俺の車でもいいよ。】

『……』
どうしよう… ユウトとの関係がバレたら…
私の車に乗せるわけにもいかないし、かと言って小 川様の車に乗る訳にもいかない…

【ねっ?いいでしょ?ねっ?ねっ?】

『本当に申し訳ないんですけど…』

【ちょっとぐらいいいでしょ?】
小川も引かずその場から離れようとしない

仕方なく車から降りた
ユウトの事を知られてはいけないのと小川が常連の 顔見知りだという事に油断していた

日も落ちた冬の河川敷
いくらコートを着てても少しでも風が吹くと寒さが 一層身にしみる

【寒いよね?やっぱり車行こうよ】
なぜこんなに車に乗せたがるのか、しかし私はまだ 寒いから気を使ってくれているのだと甘い考えでい た

『いえ、本当に大丈夫です
そう言えばなぜ小川様はこんなところで?』

【…井上さんの待ってる人は彼氏?】
私の質問とは全く違う答えが帰ってくる

『……言わないとダメですか? すみませんプライベートですしお話しする事が出来 なくて』

【井上さんバツイチでしょ?
バツイチなら寂しいで しょ?】
えっ?私バツイチってこと言ったことないよね?

驚いたのと嫌悪感を抱いた事が顔に出たのか
【知らないとでも思った?
俺は井上さんの事なら何でも知ってるよ。
ずっと見てきたからね。】

『……どう言うことでしょう……?』
少し怖くなり後ずさる

【意外と鈍いの井上さんって?
ずっと好きだったんだよ。
今の彼氏、若いし結婚してるよな?
そんな奴より俺の方がいいんじゃない?
俺にした方が見のためだと思うよ】
優しかった口調が段々低くなり脅すような口調に変 わる

『……』
私は少しの怖さが完全に恐怖に変わった
怖くて声が出ない…
これはあの小川なのか…

【バレたらヤバイんじゃない?彼氏もアンタも。
俺の女になれば黙っててもいいよ】
小川がニヤニヤと近づいてきた

頭の中はパニックでどうすればいいのか分からず、 逃げたくても恐怖で身体が動かない

『……!!!!!』
小川に抱きしめられる
恐怖で身体が固まってる私は何とか力を入れて振り払おうとするが男の力には勝てる訳もない

私は涙が溢れた

【あれれ泣いてんの?泣いてる顔もそそられる ねぇ】 小川は私の手首を掴むと自分の車に向かって歩き出し た

私は車に乗ったら最後だとようやく身体が抵抗する 【諦めたら?
今のアンタには何も出来ないでしょ?
大人しく車に乗れば何もしないからさぁ
いい加減大人しくしろ!!】

バッチーン!!
思いっきり頬を平手で叩かれた
よろめきその場に倒れた…

口の中が切れたのか血の味がする
頭もボーッとしてくる

立ち上がらない私の腕を荒く掴み起き上がらせる
【あらら血が出ちゃってるねー
言うことを聞けば痛い目になんて合わないのにねー】

涙でグチャグチャな顔で睨んでみる
【あれれまだそんな抵抗すんの?】

バッチーン!!
今度は反対側の頬を平手打ちされる
力の残ってない私は吹っ飛んだ

小川は素早く私の腕を摑み車に歩き出した
抵抗の出来ない私は最後の力を振り絞り
『…助けてぇ…!!』
声をあげた

【チッ
まだ分かってねえようだな
こんな夜の河川敷に誰もいやしないよ】

『……うっ!!』
みぞおちを殴られた
意識が遠くなっていく…

……助けて…ユウト……

「……アイっ!!!」
……ユウトの声?
……来てくれたの?

それを最後に意識が完全になくなった